政治の話題に触れるたび、
私たちはどこか疲れた感覚を覚えるようになった。
誰が正しいか、誰が間違っているか。
声の大きさや感情の強さばかりが前に出て、
「なぜこの言葉は、こんなにも届いてしまうのか」を
考える余白が失われている。
本稿は、特定の政党や人物を支持・批判するためのものではない。
注目したいのは、高市政権の発信が、なぜ“強いプレゼン”として成立しているのかという点だ。
その構造を読み解くために、本記事では
スティーブ・ジョブズが確立したプレゼンテーションの型――
「シーン1から18までのストーリー構造」を参照し、
政治という文脈の中で、同じ要素がどのように再現されているのかを整理していく。
ここで扱うのは思想ではなく、伝え方の設計である。
そしてそれは、私たちが思っている以上に、
日常の判断や感情に影響を与えている。
高市政権のプレゼンテーション
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シーン1|計画はアナログでまとめる
• 政策全体を「経済・安全保障・外交・財政」など大枠で整理
• 細部よりも先に「全体像」を示す
• 政策を“思想”ではなく“設計図”として提示
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シーン2|一番大事な問いに答える
• 「なぜ今これをやるのか」を最初に語る
• 解散・選挙・政策転換の理由を先出し
• 聞き手の最大の疑問を後回しにしない
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シーン3|救世主的な目的意識を持つ
• 自身を主役にせず「国家課題の解決者」として立つ
• 経済停滞・安全保障不安を“放置できない問題”として定義
• 個人の感情より使命感を前面に出す
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シーン4|ツイッターのようなヘッドラインを作る
• 短く、断定的な言葉を多用
• 会見・演説の冒頭に要点を集約
• 切り取られても意味が変わらない文構造
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シーン5|ロードマップを描く
• 「今 → 近未来 → 中長期」の時間軸を明示
• 段階的実行を前提とした説明
• ゴールだけでなく道筋を示す
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シーン6|敵役を導入する
• 明確な個人攻撃は避ける
• 代わりに
• 停滞
• 不確実性
• 国際環境の悪化
を“越えるべき壁”として設定
• 構造的な敵を置く
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シーン7|正義の味方を登場させる
• 国民・産業・同盟国を「共に進む側」に配置
• 与党・関係者との一体感を強調
• 対立ではなく連帯の構図をつくる
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シーン8|禅の心で伝える
• 情報量を絞り、要点だけを残す
• 複雑な政策を単純な言葉に変換
• スライドや資料は補助に徹する
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シーン9|数字をドレスアップする
• 統計を感情と結びつけて語る
• 「前年差」「過去最高」「想定超え」など比較を活用
• 数字を“意味”として提示
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シーン10|びっくりするほどキレイな言葉を使う
• 専門用語を避け、平易で力のある言葉を選ぶ
• 否定よりも肯定の語彙を多用
• 聞き手が“使える言葉”を残す
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シーン11|ステージを共有する
• 自分一人で語らない
• 閣僚・関係者・現場との連携を示す
• 「ワンマン」ではなく「チーム」に見せる
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シーン12|小道具を上手に使う
• 抽象論だけで終わらせない
• 事例・現場・具体的ケースを挟む
• 数字+実像の組み合わせ
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シーン13|「うっそー!」な瞬間を演出する
• 想定より良い結果を提示
• 予測との差分で驚きを生む
• 成果を“発見”として見せる
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シーン14|存在感の出し方を身につける
• 声量・間・視線を意識した話し方
• 強調部分では言葉を短く切る
• 非言語で「迷いのなさ」を伝える
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シーン15|簡単そうに見せる
• 本来は難しい判断を断定調で語る
• 選択肢を並べず結論から入る
• 「分かっている人」の印象を作る
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シーン16|目的に合った服装をする
• 主張しすぎない装い
• 場に応じて硬軟を使い分ける
• 自分ではなく内容に視線を集める
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シーン17|台本を捨てる
• 原稿依存度が低い
• 即答・言い換え・補足ができる
• 自分の言葉で話している印象
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シーン18|楽しむ
• 感情を荒立てない
• 余裕のある対応
• 「やるべきことをやっている人」の空気を作る
シーン1から18までを通して見えてくるのは、
高市政権のプレゼンテーションが
「偶然うまくいっている」のではなく、
現代において極めて合理的な構造を持っているという事実だ。
それは感情を煽るためだけの話法でも、
単なる演出でもない。
むしろ、複雑で不安定な時代において、
人が「理解したつもりになれる」順序を、
極めて丁寧になぞっている。
だからこそ、この構造は心地よく、
同時に気づかれにくい。
重要なのは、
この構造を「良い」「悪い」で判断することではない。
見抜けるかどうかだ。
プレゼンは、思想を運ぶ器であり、
器の形が整っていれば、中身は自然と受け入れられてしまう。
政治も例外ではない。
伝え方を知ることは、
操るためではなく、流されないための技術だ。
この18のシーンが、
誰かの言葉を距離をもって受け取るための
ひとつの視点になれば幸いである
